【第5話】
「天からの贈り物が
はやく届きますように…」
ちゅみとウミとリクは
願い橋でお願いをしていました。
あの日以来、お魚の贈り物が
とんとやってこないのです。
ちゅみはお腹がすいて
たまりません。
漁師の名和さんが時々
お魚をわけてくれるのですが
それだけでは到底たりません。
グゥ〜〜〜〜〜〜〜
ちゅみのお腹の音が、
津田の松原に響き渡りました。
「だれじゃ〜〜
だれの腹の音じゃ〜〜〜」
ちゅみとウミとリクは、
声のする方へと駆け出しました。
すると、そこには…大きな大きな松の木が!
津田の町を600年間
守り続けている松神様でした。
「松神様!!大変です!
待っても待ってもお魚の贈り物が届きません。
このままだと死んじゃいます」
「ふむ〜〜。
今から275年ほど前にも
同じようなことがあったのぅ〜〜。
飢饉はいつも海から始まるんじゃ〜〜。
答えはぜんぶ海のなかにあるぞ〜〜。
確かめにゆけ〜〜」
「はい!」
ちゅみは大きな声で返事をして
ウミとリクを見ました。
「さぁ、冒険に出よう!」
〜 Another Story 〜
3000本の松が立ち並ぶ
津田の松原。
その中の一本に、
七福神の名を持つ樹齢600年の老松があり、
津田の松原のシンボルツリーとなっています。
まさに御神木。
この木が、今回登場した松神様の
モデルになっています。
今から600年前というと…1423年。
室町時代、4代将軍足利義持の頃に植えられ、
以来600年をここで過ごしてきた勘定です。
常緑樹の松や杉、榊(さかき)などは、
神様が宿る場所とされていましたから、
大風や洪水、飢饉など、
人間の力の及ばない天変地異の際には
多くの祈りが捧げられてきたことでしょう。
さて、物語は次回大きく動きます。
「答えはいつも海の中」。
津田の歴史を知り尽くしている
松神様から発せられた言葉の意味は?
冒険に出た、ちゅみ、ウミ、リクの
行く手に待ち受けるものとは??
次回、お楽しみに!!
企画・物語/株式会社オレンジフリー 吉田 ともこ
絵/菅野 由貴子